「このSNP、2型糖尿病との関連で報告されたものですよね。なぜ尿管結石のリスク判定に使えるんですか?」――今回ご紹介するのは、そんな疑問がわく特許です。
遺伝子検査サービス「GeneLife」を展開するジェネシスヘルスケア株式会社は、特許第7161443号「尿管結石及び/又は腎結石のリスクを判定する方法」をはじめ、同じ型の特許を数多く取得しています。本記事では、その考え方をかんたんにご紹介します。
発明の概要:公知のSNPを組み合わせて、別の病気のリスクを判定する
SNP(一塩基多型)とは、DNAの配列のうち、1文字だけが人によって異なる箇所のことです。体質や病気のなりやすさに関わるとされています。
この特許は、すでに知られている複数のSNPを組み合わせ、AI(機械学習)のモデルに入力して、特定の病気のリスクを判定する方法です。使われているSNPは、もともと卵巣がん、2型糖尿病、花粉症など、別の病気や体質との関連で報告されたものです。
課題:SNP1つだけでは、リスクを見分けきれない
多くのSNPについて、何らかの病気との関連が報告されています。しかし、1つのSNPだけで「病気になりやすい人」を見分けるのは難しいのが一般的です。
そこで、どのSNPを組み合わせれば判定に役立つかを、大量のデータから探し出したのがこの発明です。
特許のポイント
- 大規模なデータ:同社の遺伝子検査の利用者7万3,000人以上のデータベースから、病気の人と病気でない人のデータを取り出して解析しています。
- 8つのSNPの組み合わせ:尿管結石・腎結石の特許では、8つのSNPと、それぞれの「遺伝子型」(例:AGか否か)まで請求項で特定しています。
- モデルの種類は限定しない:明細書の実施例はロジスティック回帰という手法ですが、請求項では「機械学習したモデル」と広く書かれています。
評価結果と、その読み方
明細書では、予測の性能をAUCという指標で示しています。AUCは、病気の人とそうでない人をどれだけ正しく見分けられるかを表す数値で、0.5ならコイン投げと同じ、1.0なら完全に見分けられることを意味します。
- 尿管結石・腎結石:AUC=0.69
- 自律神経失調症(特許第7099982号):AUC=0.72
また、SNPを1つ除くと性能が下がることも報告されています。
特許で問われるのは、新しいか、容易に思いつけないか、明細書で裏付けられているか、であり、臨床での有用性とは別の話です。
同じ型で、40件を超える病気をカバー
同社は、同じ考え方で「〇〇のリスクを判定する方法」という特許を少なくとも46件取得しています(いずれも2019年4月22日〜24日の出願)。高血圧、緑内障、骨粗しょう症、歯周病など、対象は幅広い診療科にわたります。
同じ解析の流れで、病気とSNPの組み合わせを入れ替えて出願する――大量のデータを持つ企業ならではの出願スタイルです。
なぜ知財として重要か
一つひとつの部品(SNP)は公知でも、組み合わせを具体的に特定し、データで裏付ければ特許になり得る――これがこの特許群から学べる点です。
一方で、請求項でSNPや遺伝子型を具体的に特定しているため、別の組み合わせを使う方法には、通常、権利が及びません。どこまで具体的に書くかが、権利範囲を決める勘所になります。
まとめ
ジェネシスヘルスケアのSNP特許群は、別の病気で報告されたSNPを組み合わせ、大規模データで学習したモデルで病気のリスクを判定するという発想で、多数の特許を取得した事例です。
| 特許 | 出願日 | 拒絶理由通知 | 登録日 |
|---|---|---|---|
| 第7161443号(尿管結石・腎結石) | 2019/4/24 | あり | 2022/10/18 |
| 第7099982号(自律神経失調症) | 2019/4/22 | なし | 2022/7/4 |
最新の権利状況及びその他の特許は、J-PlatPat等でご確認ください。
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